水中乾燥ってご存知ですか?
掲載日:2017年6月13日
フォレストサイクル元樹では、森林保全活動過程で出る木材の有効活用を図るべく、木材加工施設「間伐材工房 元樹」を運営しています。立ち上げから4年半が経ち、少しずつですが前進を続けています。立ち上げ当初からの課題は「木材の乾燥」です。
木材は、どんなに乾いているように見えても水分が完全に抜けるということはありません。
「木は二度生きる」と言われています。
一度目は「樹木」として立木状態の時。二度目は伐採されて「木材」となり、住宅や家具に生まれ変わって生き続けます。
木材となった後でも、ウレタン塗装などで木の呼吸を遮らないかぎり、乾湿により木は動き続けます。
一昔前は、木を伐採するする時期は秋口から冬にかけてと決まっていましたが、今は一年中木を伐採しています。特に4月〜9月くらいの時期に伐採された木は水分が多く含まれています。住宅を作る建材、家具やおもちゃに使用する木材は、しっかり乾燥させてから使用しないと、やがて反ったり割れたり、変色したり強度にも影響が出てしまいます。
伐採した立木の乾燥を早める方法はいくつかあります。
- 伐採直後に実施する「葉枯らし」
伐採後、枝払いせず葉がついた状態で林地に放置することで水分を抜きます。搬出しやすくなるだけでなく、その後の乾燥も早まります。 - 伐採前に行う「まき枯らし」
立木状態で皮を剥き乾燥させる方法です。 - 伐採時期を限定する「新月伐採」
その名の通り、限られた新月の時に伐採をします。乾燥中に虫が入りにくく、腐りにくくなります。
フォレストサイクル元樹でも「葉枯らし」の経験がありますが、重なっている状態での枝払いや玉切りは作業リスクが増し、寝かせている間お金が回りません。他の方法も最終的にはコスト面で採算が取れず、実施する事業所はあまりないようです。
伐採後の木材の乾燥方法は、人工乾燥や天然乾燥が中心です。
人工乾燥は、乾燥技術や乾燥機能性能も向上していますが、木が本来持っている良さが失われてしまうという欠点や、使われた後の木割れの可能性も指摘されています。天然乾燥は、木の良さは保たれますが、乾燥までに長い時間がかかることと乾燥期間中の木割れが懸念され、コスト面の負担からもあまり実施されていないようです。私たちは木材を天然乾燥させてきましたが、木の割れや反りに悩まされてきました。
そこで先月から検証を始めた乾燥方法が「水中乾燥」です。
木を一定期間池や沼地の貯木場に入れて、水中に漬けて(沈めて)乾かす方法です。昔は全国の至るところで実施されていた方法で、丸太のまま水に沈めて約1年、水から出してからも更に乾燥させます。
フォレストサイクル元樹の敷地内と建物内の水場にに簡易貯木場を設置しました。10mm厚にカットした丸太の輪切りを、水中に沈めて4日間その後水から引き上げて4日間屋外で自然乾燥を実施したところ、”割れがほとんど発生しない・薄い輪切り材の反りも全くない・木口面の発色が鮮やか”の想定以上の効果を確認することができました。含水率も10%前後まで落ちていました。
2日目辺りから貯水場には泡が吹き出し、水を変える為薄板を取り出すと、漬けていた水は茶色く濁り色んなゴミが沈んでいました。また、水に入れたばかりの時は木が水面に浮いた状態でしたが、4日目には殆どの薄い輪切り板が水中に沈んでいました。
丸太の状態では、辺材(外側)から乾燥が進み、心材(中心)まで乾燥する過程で割れが生じます。
今でも家を建てる際に太い梁などの角材に背割れを入れるのは、割れを防ぎ心材の乾燥を早めるためのようです。
調べてみると、木材を水中に沈めることにより、中にあるチリやホコリが樹液とともに外に流れ、水と入れ替わる。比重が1を超える(水に沈む)樹種は数種類しかありませんが、比重が小さい木でも一定期間水中に沈めることにより比重が1を超え、薄い輪切りの木でも水中に沈んだようです。
木の中のゴミやチリ等の不純物が無くなることでその木が持つ本来の綺麗な肌が現れ、水と入れ替わることで辺材と心材がほぼ均等に乾燥が進み、割れや反りが発生しにくくなるようです。また、不思議なのですが水中でも乾燥が進んでいるように思われます。今でも水中乾燥をした木材で家を建てている工務店さんもあり、背割れをしなくても木に割れが入らないとのこと。
今までの水中乾燥は原木丸太のままだった為、漬けておく時間もその後の乾燥時間も年単位でかかっていますが、フォレストサイクル元樹では、生木のままで製材した板や角材ではどうなのか?今後時間をかけて検証してゆこうと思っています。自然乾燥のやり方や乾燥後の保管方法も、板や角材は縦に置いて乾かし保管を、今後徹底してゆく予定です。
水中乾燥は今までより手間と時間はかかりますが、割れや反りを防ぎ、木の良さを保つベストな乾燥方法として今後も検証していこうと思っています。